2021.09.30
リトリート / グルメ
千葉県とハーブの歴史は江戸時代にさかのぼります。1722年、江戸幕府の命により船橋市薬円台にある約30万坪(99,173.6㎡)の土地に下総薬園(滝台野薬園)が開設されました。この薬園は残念ながら現存していませんが、気候が温暖で植物が育ちやすい県内には、ハーブ栽培がさかんに行われています。
例えば、県東南部に位置する夷隅郡大多喜町。千葉県が1987年に設立した「大多喜町薬草園」(後に大多喜町に移譲)をはじめ、大多喜町のハーブを一躍有名にした「大多喜ハーブアイランド」(2007年閉園。現、丘の上バラ園)や、4,500㎡を超える敷地と全天候型室内ガラスハウスが人気の「大多喜ハーブガーデン」などの施設があり、年間を通じてハーブに親しむことができます。
さて、冒頭にご紹介した「大多喜町薬草園」は2015年に閉園し、その跡地は蒸留家の江口宏志氏らにより2017年から「mitosaya薬草園蒸留所」(以下、mitosaya)として営まれています。約16,000㎡の園内には、現在でも約300種のハーブや果樹が植えられており、敷地内で、毎月第一・第三日曜日に開催される無人販売所“HONOR STAND”では生産品や仕入れた野菜などを販売する他、来場者と一緒に農作業を行う“Farming Friday”なども開催しています。
蒸留家に転身する以前は、日本のブックカルチャーを代表する書店「UTRECHT」を都内で営んでいた江口氏。大多喜町の印象について聞くと「千葉の南部は、不思議と自分らしさをもって生きている人が多い気がする。東京や成田、羽田にも近いので、面白いことにチャレンジして発信しても人が集まりやすい」と、土地と人と出会いの“距離”のバランスの良さを挙げました。
mitosayaでは、数十本から数百本、ごく限られた数の蒸留酒を月に3~4種類ほどをつくっています。蒸留酒は食前や食後、モード(気分)を変えたいときなどに嗜むものだからこそ、江口氏は「味や香りはもちろん、この場所だからできる原料や製造過程から楽しめるものを提案したい。僕らがつくるお酒は原料そのもの」とこだわりを話してくれました。
mitosayaでは蒸留酒以外にも、植物や果実を余すところなく利用してつくられた様々なプロダクトを販売しています。お酒以外の品も充実しているためか、実に購入者の6割が女性だそうです。
同じ植物でも季節や収穫のタイミングによって使い方が違うなど「自然の良さは、小さな発見が詰まっていること」と話す江口氏。例えば、ウイスキー造りのために育てているライ麦の茎は、プラスチックに代わるストローとして飲食店からの引き合いが多く、近隣の福祉作業所と協働しながら、春に収穫した温室一棟分ほどの麦藁を一年くらいかけて無理のないペースで製造しています。
このようなものづくりのヒントは、蒸留酒をつくりながら鶏の世話をしたり犬と散歩をしたりと、実際に園内に暮らしているからこそ見えてくるそうで、「自然からの恵みをmitosayaらしい形で表現したい。」と話す姿に “暮しながらつくる”日々の充実を感じました。
今回、リソルの森では、mitosayaオー・ド・ヴィを「BARもみじ」にて2021年10月1日より期間限定でご提供します。ふくよかな味と香りに癒される、特別なひとときをお過ごしください。
大多喜ハーブガーデン
千葉県夷隅郡大多喜町小土呂2423
https://herbisland.co.jp/
mitosaya薬草園蒸留所
千葉県夷隅郡大多喜町大多喜486
https://mitosaya.com/